「日本の学校給食」第4回  徹底した衛生管理で安全・安心な給食を子どもたちに提供

 児童・生徒に昼食として提供する学校給食だけに一番怖いのが食中毒の発生です。日本の学校給食法では、学校給食の食中毒を防ぐため、衛生管理基準を厳しくそしてきめ細かく定めています。給食施設や設備の管理はもとより食品の取り扱い、調理作業、衛生管理体制と実に多くの項目に渡っています。

 では実際の現場では、衛生管理基準にそってどのように給食が調理されているのでしょうか? 群馬県みなかみ町月夜野学校給食センターで取材しました。

 なお、同給食センターは2015年12月に行われた「第10回全国学校給食甲子園」で、全国2,054の学校・施設の応募の中から選ばれ、日本一の学校給食の栄冠に輝いています。

 

調理員一人ひとりの健康状態も厳しくチェック

 朝8時、静かな山間にある月夜野学校給食センターではすでに食材の下処理が始まっています。ここでは12人の調理員が小学校5校・中学校3校、計8校に向けて毎日約1,000食をつくっているのです。「味の旅カナダ」と題したこの日の献立は、メインの鮭のグリルとサラダや大麦入りスープなど計6品で、まるでカナダ旅行をしているような気分にさせてくれます。

 広い調理場は大きなシンクや鍋、釜、ベルトコンベアなどが整然と並び、さながら食品工場といった感じです。また食材の下処理の場所(汚染区域)と調理の場所(非汚染区域)も部屋を区切って、衛生管理を徹底させたレイアウトとなっています。

 その徹底ぶりは調理員に対しても同様で、毎月2回の検便が義務づけられ、出勤すると毎日自分たちの健康状態を記入します。下痢や発熱がある場合は自宅待機となり、給食をつくることはもちろんのこと職場に出勤することもできません。

     chori           大きな釜など調理機器が並んでいます。        サラダ用の野菜も必ず加熱します。

 

調理区域はクリーンルーム並みの清潔さ

 調理場をてきぱきと動く調理員は全員、清潔な調理着、ヘアキャップ、マスクで身を固めています。でも良く見ると、上着やエプロンは人によって色が違っています。「下処理の人はブルーの上着で調理の人は白の上着にピンクのエプロン。また魚・肉を扱う人は使い捨てのブルーのエプロンなどと作業によって色分けをし、汚染を防いでいます」と同センターの栄養教諭、本間ナヲミ先生が説明してくれました。

 そして何よりも大切なのが手洗いです。作業開始前や下処理室から調理室に移動する際、調理員は爪の中まできれいにする爪ブラシを使いながら丁寧に手洗いをします。さらに外部から調理室へ入るときは、エアーシャワーを浴びて塵埃などを払わないと入室できません。その清潔さは精密機器工場のクリーンルーム並みといえるでしょう

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調理員さんたちは調理前、爪ブラシを使いながらしっかり手を洗います。手の洗い方も壁に貼られています。

 

肉や魚の中心温度を必ず計測

 給食で出される食材の調理法も、衛生管理基準で厳しく定められています。例えば、学校給食では野菜は生のままで提供はできません。原則として必ず加熱しなくてはならないのです。そのためこの日の献立のカラフルサラダも、細かく切った野菜を85℃のお湯に1分間通した後、冷却機で冷やします。さらに、冷却後の2次汚染を防ぐため、ドレッシングとあえる作業は、調理室よりも室温が低い別室で行われます。

 肉・魚類も同様です。大きなオーブンで焼かれたサーモンの中心温度を、調理員が計測しています。これは肉や魚を加熱する場合は、1分間以上85℃以上でなければいけないということが衛生基準で定められているからです。 

 さらに調理器具も野菜・肉・魚など、必ずそれ専用の調理器具を使って作業をします。

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   魚や肉は別室で下処理します。               魚の中心温度を計測します。

 

ドライ方式で細菌の増殖を防ぐ

 調理の作業現場というと床に水を撒いて清潔にするというイメージがありますが、日本の学校給食の場合、ドライ方式といって床が乾燥した状態で作業するルールになっています。これは床が水で濡れていると細菌の増殖がしやすくなり、床からの跳ね水による食品の汚染を防ぐためです。

 また食品の検収や保管、そして調理過程においても食品や調理器具が床面に接触しないよう床面から60cm以上の置き台を設けるよう定められています。子どもたちが直接口にする給食だけに、衛生管理面で万全の体制をとっているのが日本の学校給食です。

 今回訪れた月夜野学校給食センターは味や栄養面のバランスだけでなく、衛生管理の面でもトップクラスと言えます。施設の規模で多少やり方に違いはありますが、日本全国の給食調理現場でも同じように衛生基準を厳しく守って、安心・安全な学校給食を子どもたに提供しているのです。

dekiagari 「味の旅カナダ」の給食が出来上がりました。献立は「こめっこパン・牛乳・鮭のグリルレモンバターソースかけ・カラフルサラダ・大麦入りスープ・メープルマフィン」

 

文・写真:大森光枝 (全国学校給食甲子園 事務局長) 
取材協力: 群馬県みなかみ町月夜野学校給食センター本間ナヲミ栄養教諭と皆さん

 

※なお、この記事は科学技術振興機構(JST)の中国向けポータルサイト「客観日本」で中国に配信されています

http://www.keguanjp.com/kgjp_shehui/kgjp_sh_yishi/pt20160803103146.html