Blog食育交歓

2018.1.17 Wed

若手栄養士の給食奮戦記(2)

学校給食の充実と食育の推進に取り組んでいる若手栄養士の現場からの報告です。月刊誌「学校給食」のご高配による転載です。毎回、充実した内容になります、ご期待ください。

卒業お祝い給食に取り組む

平尾 綾(東京都大田区立入新井第二小学校・学校栄養職員)

月刊「学校給食」2016年6年6月号に掲載

平尾先生顔写真加工_new
本校では毎年,6年生の卒業をお祝いして,給食や食育に関する特別な取り組みを行っています。今回はその中の,3つの取り組みを紹介します。

 ①バイキング給食

 卒業の前に6年生を対象に行っています。実施する日の午前中に,各クラス1時間ずつ,『栄養バランスを考えて,バイキング給食を楽しもう』という授業を行います。この授業は給食を例に,何が主食・主菜・副菜にあたるのか,そしてどのような働きがあるのかを説明します。

 また,バイキング給食の時のマナーについても学ぶ内容になっています。バイキング給食を行うだけでは,「楽しくておいしいから,好きなものを好きなだけ食べる」で終わってしまいます。しかし,授業で学ぶことにより,栄養バランスを考えながら選ぶことができ,今後の実践につながると思い,毎年バイキング給食と授業をセットに行っています。

 昨年度のメニューは,おにぎりとパンを数種類ずつ,魚の照り焼き,鶏肉のから揚げ,フライドポテト,卵焼き,フレンチサラダ,フルーツの盛り合わせ,牛乳です。毎年,前年度までの反省をもとに,少しずつ内容を変更しています。

 今までで一番苦労したのは,インフルエンザの流行により,欠席児童が多かった時の量の調整です。少し減らして作りましたが,当日の朝まで出席人数がわからず,量の調整は一苦労でした。出席した子どもたちにとっては量が少し多かったかもしれませんが,みんな残さず食べてくれました。とてもうれしかったです。

 バイキング給食は日々の給食の準備に比べ,綿密な準備,調理員の方々と担任の先生との打ち合わせが必要なので,とても大変です。しかし,子どもたちも先生方も楽しみにしてくれていて,みんなの笑顔を見ると,また来年も頑張ろうという気持ちになります。「今年度はどんな料理にしようかな?」と,今から考えています。

①

6年1組【ビスキュイパン,牛乳,ワンタンスープ,パリパリサラダ】ワンタンスープのワンタンは,一つひとつ丁寧に皮に詰めた手作り

 

②リクエスト給食

 学年末に「6年〇組のリクエスト給食」ということで,6年生各クラスのリクエストメニューを出す取り組みをしています。 

 ただ,好きな料理をバラバラと言われても,なかなかバランスの良い1食に仕上がりません。そのため,まずこちらでいくつかの定食を設定し,その中からクラスで1つの定食を選んでもらいます。

 例えば,A定食「カレーライス,海藻サラダ,果物」,B定食「焼き豚チャーハンor エビチャーハン,ちくわの磯辺揚げ,中華スープ,」,C定食「五目ご飯,焼き魚,ごまあえ or おひたし,豚汁」のように設定します。

 もし,C定食が選ばれたら,ごまあえとおひたしのどちらを選ぶか2段階で多数決をとります。毎年,ラーメンや,丸パンにクッキー生地をのせたビスキュイパンが人気です。

 6年生のリクエスト給食は,6年生はもちろんのこと,ほかの学年も「6年生が選んだものだから頑張って食べよう」という雰囲気になります。いつもの給食以上に残食がとても少なくなる日です。

 ②

6年2組【みそラーメン,牛乳,もやしときゅうりの中華風】ラーメンの具の焼き豚は,ブロック肉を朝から給食室で煮込んで作った

 

③お祝い冊子

 現在,全学年に食育の授業を行っていますが,まだまだたくさん伝えたいことがあります。中学生,高校生と大きくなっていくと,自分で食べる物を選択していく機会が多くなります。また,運動部に入って活動量が多くなると,普段より食べる量が多くなり,水分補給も重要になってきます。

 そのようなときに参考になるように,朝ごはんの大切さ,水分補給の仕方,バランス良く食べるポイントなどをまとめた冊子を,卒業前に1人1冊ずつ配っています。この冊子は市販で売っているものではなく,いろいろな資料を参考にして作った私のオリジナルです。

 また,本校で人気のメニューのレシピを載せたり,エネルギー量・たんぱく質量・脂質量・食塩量など,食事摂取基準を参考にした資料も載せています。約20ページの冊子を自分1人で約100人分印刷して,一つひとつとじるのはとても時間がかかって大変な作業ですが,今後も続けていきたいと思います。

③

6年3組【ナン,キーマカレー,牛乳,海藻サラダ,デコポン】

 このような取り組みが,卒業前の楽しい思い出になるように,また今後の生活に活かせるように,食べることの楽しさ・大切さを伝えていければいいなと思います。